古き街並と新しさが混在するグルマン天国

コーディネート/田中敦子, 写真/Mika Inoué, 取材・文/猫沢エミ

 

2000年都市リヨン。古き街並と新しさが混在するグルマン天国
紀元前43年にローマの植民市ルグドゥヌムとして建設され、その後2000年に渡る歴史を刻んできた古都・リヨンは、フランス東部・ローヌ県、ローヌ・アルプ地方に位置する。1998年、歴史的景観がユネスコの世界遺産として登録されたリヨンの旧市街地は、フランスの中で最も古い街並を2000年もの間、守り続け発展してきた稀有な都市でもある。ソーヌ川とローヌ川に挟まれたPresqu’ île(プレスキル/小さな半島)と呼ばれる地区には、商業や絹織物産業が栄え、ソーヌ川の左岸にフルヴィエールの丘と、その下に広がる迷路のようなパッサージュを内包した古い居住区が広がる。そして、ローヌ川右岸、TGVの発着駅のひとつ、Part-Dieu(パール・デュー)駅周辺のビジネス街。ことに近年は、プレスキルの南部、Perrache(ぺラーシュ)地区の再開発が盛んで、新しいアート・スポットや文化が生まれつつある。そして、料理人としてフランス初のラ・レジオン・ドヌール国家勲章を授与された、巨匠ポール・ボキューズの本拠地リヨン。おいしいお店をたどってゆけば、そこにはかならずボキューズとのなんらかの関わりがあるというこの街には、レストラン・ガイドでは評価しきれない、本場のおいしさが溢れている。古都の木枯らしに吹かれながら歴史の息吹を感じ、至極の料理を堪能する。特に豊かな食材の溢れる冬のリヨンに行かないなんて、ちょっともったいない話なのである。

 

 


 

 

Musée des tissus et Musée des arts decoratifs de Lyon
(装飾・織物博物館)

34 rue de la charité 69002 Lyon
Tél:04.78.38.42.00
Métro:A線、Ampére-Victor Hugo
月・祝日定休  10:00~17:30 Billet:常設展のみ/7ユーロ、常設展+企画展(Expositon)ひとつ/10ユーロ、ふたつの企画展のみ/10ユーロ

 

 

 

リヨンといえば絹。そのすべてを見る博物館。

リヨンは、絹織物の名産地として名高く、市内の工房では、有名デザイナーを抱えるブランドの商品製作を多く手がけている。その歴史は古く、初期中世までさかのぼる。1856年、織物博物館の前身・産業博物館が作られ、博物館として一般公開されたのは1864年のこと。その後、時代と共にありとあらゆる布地に関する貴重なコレクションが集められ、現在の博物館へと繋がってゆく。リヨン生産の布地のみならず、世界中の布に関する歴史的な資料、そして織物博物館と併設されている装飾博物館では、リヨン生産の布地を使った当時のインテリアを見ることができる。常設展に加え、企画展も充実した内容。2009年10月16日~2010年3月28日で開催中の企画展‘Dans la peau du gant-ドン・ラ・ポ・デュ・ガン’は、手袋の制作方法・歴史を取り上げた興味深いもの。

 


見事な花のデコレーションが美しい15世紀の指なし手袋。

 

(写真下)16世紀、リヨンの絹織物産業に多大な業績を残したフィリップ・ラ・サールの記念室。リヨン市内の繊維工房の整備などに尽力したが、ファブリック・デザイナーとしても活躍した。(写真左)1786~87年の間、ベルサイユ宮殿のマリー・アントワネット妃の部屋の壁を覆っていた飾り布。現在でも、当時と同じリヨン市内の工房で修復・制作が続けられている。

 

 


BONZOUR JAPON Nº 18 [古都・リヨンを巡る旅 前編] より

*取材データは最新のものですが、ここで紹介される品物の値段、および各店舗の営業時間・定休日は急に変更されることがあります。また、文章は取材当時のものを使用していますことをあらかじめご了承ください。