Montmartre-布地屋街の小さな歴史物語

コーディネート/田中敦子, 写真/Mika Inoué, 取材・文/猫沢エミ

白亜のサクレ・クール寺院が小高い丘の上にそびえ立つ、パリ18区モンマルトル。パリを訪れる人ならば、かならず一度は足を運ぶ観光名所でもある。2001年に公開された映画「アメリ」(原題:Le Fabuleux Destin d’Amélie Poulain-アメリ・プーランの素晴らしい運命)で、物語の中心舞台になったことがきっかけになり、日本におけるモンマルトルの知名度はぐんとアップした。ここ数年、若手アーティストたちがこのカルチエに集まり、新しいブティックやお店が続々とオープンして、ますます賑わいを見せるモンマルトル。しかし、その傍らで、長い歴史を持つパリ有数の布地屋街が広がっているのをみなさんはご存知だろうか?

サクレ・クール寺院に向って右手、丘のふもとRue de Livingstone、Rue d’Orselを中心に軒を連ねるのが、パリ有数の布地屋街。パリ市内には、歴史あるメルスリーが点在するが、これだけまとまったカルチエは他にはない。1650年頃、今や老舗の布地デパートとなったDREYFUS-ドレフュスと、そのお向かいの、現在ではHALLE SAINT PIERREがある場所に、最初の布地屋二軒が店を出したことから、このカルチエの歴史は始まった。残念ながら、一軒の店は姿を消してしまったものの、DREYFUSは、当時の面影を今も色濃く伝えている。(HALLE SAINT PIERRE-アール・サン・ピエールは、現在とても興味深い美術館へと姿を変えた。)しかし、どんなメディアも取材お断り!といった昔気質な姿勢のため、今回は残念ながら館内の写真を載せることができなかった。1Fは、かわいいプリントコットンやラメ素材の布地、アフリカ布が豊富でお安い。2Fはリネンやインテリア関連の布地、3Fは服地、4Fはカーテン・レース・スウェード・合皮素材など、5Fはオーダーメイドも受け付けるハイ・インテリアの布地と、各階によって扱う素材が異なる。特にお勧めなのは、4Fで扱っているパラソルやひさし用のフレンチストライプの丈夫な生地(Toile plein air-トワル・プラネール)。欲しい布地を見つけたら、近くの店員さんに声をかけて切り分けてもらおう。仏語が難しかったらメモに「1m」という風に書いて差し出して。小さな紙片を受け取って、クラシックなレジにてお会計。一見強面な職人ムッシュが多いけれど、皆ちょっとシャイなだけで本当はとっても親切だから、怖がらずに声をかけてみよう。そうそう、DREYFUS-の上階は、サクレ・クール寺院の絶景スポットでもあるので、ぜひ雰囲気だけでも楽しみに訪れてみて。歴史を感じさせる重いドアや木のぬくもりには、ちょっとした感動を覚えます。

 

DREYFUS-MARCHE SAINT PIERRE
ドレフュス・マルシェ・サンピエール(布地)

2rue Charles Nodier 75018 Paris
Tél:01.46.06.92.25
Métro:4番線 Barbés Rochechouart , 2番線 Anvers
日曜定休 月〜金 / 10:00~18:30 土 / 10:00~19:00
www.marchesaintpierre.com
*毎年、3月、10月の第一月曜日に、大規模なセールあり。

 

 

 

 


BONZOUR JAPON Nº 30 [愛すべき、パリのメルスリー] より

*取材データは最新のものですが、ここで紹介される品物の値段、および各店舗の営業時間・定休日は急に変更されることがあります。また、文章は取材当時のものを使用していますことをあらかじめご了承ください。