伝統的ルセットを、現代のフォルムで魅せるフランス菓子の代弁者

Carl Marletti
カール・マルレッティ

51 rue Censier 75005 Paris
Tél:01.43.31.68.12
Métro:7番線Censier-Daubenton
月曜定休 火〜土 / 10 :00〜20 :00 日 / 10 :00〜13 :30
www.carlmarletti.com

 

 

カールが2005年に発表したCinq-cents feuilles(ミル=1000フォイユの半分のパイ生地を折り込んだサンソン=500フォイユの意)は、シャンタル・トーマス、アニエスベーを始めとするモード界のセレブたちに、その美しさとデリケートな美味しさがすぐさま注目され、一躍フランスのトップパティシエへと躍り出た。しかし、そんな彼のセンセーショナルなスターダムとは別に、実際のカールさんは気さくで物腰の柔らかな好人物。彼は子供時代、おじいさまがパティシエ・ブーランジェだったことから、その手元を食い入るように見て育つ。エソンヌ県のHôtelier Etiolles高校に入学後、名店・ルノートルの見習いとして入り、その頃、ルノートルに在籍していた数々の名パティシエの中でも、とりわけBernard Ercker氏にフランス菓子の基礎を叩き込まれ、Patrick Champagnolにデコレーションアートを学んだという。1992年Grand Hôtel Intercontinental、それからオペラ座横の名門カフェCafé de la paixに入り、Cinq-cents feuillesのアイディアの元になる200 Millefeuillesの製作を担当する。15年の就任を終えて、2007年12月1日、自身の名前を掲げたパティスリーを、左岸の閑静なソンシエにオープンした。「お客様は、まずケーキの外見を見る。伝統のルセットにのっとった美味しさがあるというのは、基本中の基本だけれど、美しいことは必須条件なんだ。僕は旅や建築物、世界のあらゆることからケーキのインスピレーションを得る。特に日本からはたくさん美のエスプリをもらった。」というカールさんは、神戸のエコール・コルドンブルーや東京・大阪のエコール・バンタンなどでもたびたび講師として招かれている。「僕のケーキを買うということは、それと一緒に僕のエスプリも買って頂くってことだよね。」と、謙虚な優しい笑顔を見せた。

 

シェフ、カール・マルレッティ。「僕は特にフラワーエッセンスやスパイスを好んで使うけれど、あくまでも素材の邪魔をしない適量であることがすごく大事だ。」撮影用のケーキチョイスに、あえてミルフォイユを外したってことは、もうミルフォイユの美味しさは周知の下ってことですね!(でも、お勧め♡)

シックでモダンな落ち着くインテリアの外観。そして店内のガラスケースには、たくさんの品揃えがお客様を待つ。取材中も、嬉しそうにカール印の箱を抱えたムッシュが家路を急いでいた。女性だけではなく、男性にもスイーツが欠かせないのがフランス。

 

(写真左)【Lily Volley 4.50€】“リリィ・ヴォレ”という、すずらんの名前がついた、カールさんの哲学である「ケーキのフォルムにはエステティック(美学)がなければいけない。」という言葉そのものの美しいケーキ。香ばしいパイの土台に乗った、すみれのグラサージュ&アラザンをのせたプチシューと、うずたかく盛られたすみれの生クリーム。その中にはカシスのコンフィチュールがかくれている。クリームの中には、すみれの花の砂糖漬けが混ぜられていて、食べるたびにかりかりと香ばしい香りを醸す。
【Paris-Brest 4.10€】伝統ケーキ、パリ・ブレストは通常車輪型のリングシューだけれども、こちらは従来のシュークリームみたいな円型!と驚くのは、伝統菓子パリ・ブレストは車輪型!と、フランス人は小さな頃から記憶しているから。キャラメリゼされた、たっぷりのプラリネクリームは、まるで生キャラメルのような濃厚さ。シュー好きにはたまらない、食べごたえのある味わい。
【Mont Blanc 5.20€】こちらも伝統菓子のモンブラン(!)がカールさんの手にかかると、まるでアルプスの山脈を空から眺めているような、広い景色のフォルムへ。従来の、重いモンブランの概念を打ち破る軽やかさに、きっとあなたもおどろくに違いない。軽く上品な生クリームの外壁の中には、こっくりとした栗のペーストが敷かれていて、口の中でちゃんと“モンブラン”の完璧な味として完成する。名店アンジェリーナの伝統的などっしりとしたそれとは真逆の、まさにエステティックのある軽やかなモンブラン。
【Censier 4.30€】Carl Marlettiのある、ソンシエ通りと同じ名前がつけられた、濃く、マスキュランなお菓子。キャラメリゼされたパフが香ばしい軽い土台の上には、苦みの効いたショコラガナッシュ(ショコラ通にはたまらないTaïnori産のカカオ豆を使用した)。3時のおやつというよりも、トラディショナルなフランスのお料理を頂いた後、食後酒のカルヴァドスなんかと合わせたら、素敵な大人時間が過ごせそう!

 

 


BONZOUR JAPON Nº 31 [今、一番気になるパリのパティスリー] より

*取材データは最新のものですが、ここで紹介される品物の値段、および各店舗の営業時間・定休日は急に変更されることがあります。また、文章は取材当時のものを使用していますことをあらかじめご了承ください。